“B級グルメ”とは、地域の日常に根付いた庶民的な料理のこと。高価な食材や華やかな盛り付けとは無縁でも、安くてボリューム満点、しかも地元の個性がぎゅっと詰まっているため、近年ますます注目されています。たとえば静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」は、コシの強い麺と肉かす、イワシの削り粉が生む独特の風味でリピーターが絶えません。秋田県横手市の「横手やきそば」は、甘めのソースと目玉焼き・福神漬けの組み合わせが絶妙で、一度食べるとクセになる味わいです。
公共交通とB級グルメの相性がいいワケ
車での移動だと駐車場所に悩んだり、ガソリン代や運転の疲れが気になったりしますが、公共交通ならそうした負担はほとんどありません。電車やバスを乗り継いで気になる街に降り立ち、ふらりと商店街を歩けば、地元の方々が通う名店や屋台を見つけることが多いものです。特に路線バスで移動する場合、車窓からの街並みを観察しながら気になった停留所で降りてみる――そうした“即興”の寄り道が、思わぬ名店との出会いを生むことも。公共交通ならではの“自由度”を活かして、予定外の場所に飛び込むのも旅の醍醐味です。
効率よくハシゴするコツ
B級グルメの魅力は、何といってもリーズナブルに食べ比べができる点。1品500円~1,000円前後で満足できる料理も多いので、数軒をハシゴしても大きな負担になりにくいのが嬉しいところ。ただし、ローカル線や路線バスは本数が限られているため、時刻表の確認は必須です。とくに週末は観光客が増えて混雑する可能性もあるので、気になるお店があれば事前に営業時間や定休日をチェックしておきましょう。駅の観光案内所やバスセンターでは地域の地図やパンフレットを入手できることが多く、行きたいお店までの徒歩ルートも確認しやすいはずです。
バリエーション豊かなB級グルメの世界
うどん・焼きそば・ラーメンなどの麺類から、丼ものや揚げ物、屋台メシまで、B級グルメの幅は実に広いです。和歌山のラーメンは濃厚な豚骨しょうゆスープに細麺が特徴で、早寿司と一緒に食べる文化が根付いています。北海道札幌市のスープカレーはスパイスと野菜の旨みを活かした逸品で、バスや地下鉄で市内を巡れば複数のお店を短時間で食べ比べ可能。愛媛県松山市では、路面電車を活用して道後温泉周辺と市内中心部を行き来しながら“鍋焼きうどん”や“鯛めし”を楽しむプランもおすすめです。
ローカルイベントを狙えばさらにお得
各地域では“B級グルメフェス”や“○○祭り”などのイベントが開催されることも。数十種類のメニューが一堂に集まるため、短い日程でも多彩な味を満喫できます。こうしたイベントは観光協会や自治体のSNSで告知されることが多く、入場料無料で屋台形式のブースが並ぶケースも珍しくありません。人気メニューは行列ができる場合もありますが、その待ち時間に地元の人と会話が弾んで情報交換ができるなど、旅の思わぬ楽しみに繋がります。
気軽に“もう一品”を楽しめるのも公共交通ならでは
公共交通で巡る利点は、食事の合間にお酒やスイーツを挟んでも問題ないこと。車だと運転者はアルコールを控えなければいけませんが、公共交通ならご当地ビールや地酒を気軽に味わえます。麺類や粉ものをハシゴした後、「もう少し食べたいな」というときにも、フットワーク軽く一駅先へ行くなど調整がしやすいのは大きなメリットと言えるでしょう。
地域に根差したB級グルメは、見た目の豪華さよりも“地元の空気”を凝縮した一皿だからこそ、旅行者の心を掴みます。しかも、複数の店を食べ歩きしても懐に優しいうえ、公共交通を利用することで駐車場や運転疲れの心配が減り、寄り道や突発的な観光も楽しみやすくなるのがポイントです。次の旅では、あえて有名観光地を飛び越え、B級グルメを目当てにローカル線や路線バスで巡ってみてはいかがでしょうか。自分だけの“ベスト1”を探す過程で、きっと思いがけない発見や素朴な温かさに触れられるはずです。