公共交通機関を使った旅の醍醐味は、目的地に到着するまでの時間や道中の風景まで「旅の思い出」に変えられるところ。そんな魅力を存分に味わえるのが、日本各地の“観光列車”です。移動自体がエンターテインメントになり、車窓からの絶景や車内限定グルメを楽しめるのは、運転に気を取られる必要のない公共交通ならでは。今回は、全国に点在する観光列車の魅力や選び方、楽しむコツをたっぷりご紹介します。
観光列車とは?その魅力を再確認
“乗ること”が目的になる鉄道
観光列車とは、一般的な通勤・通学向けの車両とは異なり、地域の特色を活かした特別仕様の車両を使う列車のこと。車内デザインや座席配置、サービスなどに工夫が凝らされ、乗客が移動時間をエンターテインメントとして楽しめるようになっています。
- 窓が大きく設計され、絶景を存分に眺められる
- シートや内装が豪華で、ソファや展望デッキなどを備えている
- 地元食材を活用した限定スイーツやお弁当を車内販売することも多い
運転不要だからこそ味わえる余裕
車やバイクで旅をすると、運転者はどうしても景色をじっくり見るのが難しいもの。その点、列車なら誰もが同じタイミングで車窓に広がる景観を楽しむことができます。撮影や会話に専念できるのも魅力のひとつ。さらに、お酒を楽しみながらのんびり過ごせるのも、公共交通機関だからこそ実現できる贅沢です。
全国各地のおすすめ観光列車ピックアップ
JR九州「或る列車」(福岡・長崎)
金色を基調としたゴージャスな外観と、豪華な内装が目を引く「或る列車」。コース途中には、列車内で供される“スイーツコース料理”があり、地元産の厳選素材を活かしたスイーツや軽食を味わえるのが目玉です。まるで高級レストランにいるかのような体験ができ、走行ルートに合わせて車窓から見える筑後エリアの田園風景や有明海の眺めも格別。
- 乗車区間
大分~日田、または博多~佐世保など、時期によって変更あり - 予約方法
旅行会社のツアー、もしくはJR九州の公式サイトで事前予約制 - 見どころ
車内でのスイーツフルコース。乗客のためだけにシェフが作るデザートが評判高し
近畿日本鉄道「しまかぜ」(大阪・名古屋~伊勢志摩)
伊勢志摩エリアへのアクセスとして人気の「しまかぜ」は、全席プレミアムシートで大きな窓とゆったりした座席が魅力。車内にはカフェ車両があり、伊勢海老や真珠をイメージしたスイーツや、沿線食材を使った軽食を楽しめます。さらに、個室席やサロン席といったバリエーションもあり、グループやファミリーでの旅行にぴったり。
- 乗車区間
大阪難波駅・京都駅・名古屋駅など~賢島駅 - 予約方法
近鉄特急予約サイトや主要駅の特急券売り場 - 見どころ
伊勢神宮や志摩スペイン村をはじめとする、三重の観光スポット巡りとの相性が抜群
JR東日本「リゾートしらかみ」(秋田~青森)
五能線を走る「リゾートしらかみ」は、世界遺産・白神山地や日本海沿いの絶景が楽しめる観光列車。ブナの森を見渡す区間や、海岸線ギリギリを走る区間など変化に富んだ車窓が特徴です。車内では津軽三味線の生演奏や地元の物産販売など、青森・秋田の文化を体感できるイベントが催されることもしばしば。
- 乗車区間
秋田駅~弘前駅(あるいは青森駅) - 予約方法
JR東日本の「えきねっと」など - 見どころ
海沿いから見える夕焼け、津軽三味線のライブパフォーマンス
土佐くろしお鉄道「四国まんなか千年ものがたり」(高知)
四国の真ん中を貫く土讃線を走行する観光列車。「山の章」「川の章」「海の章」と名付けられた車両は、それぞれ内装テーマや提供される食事が異なります。地元食材をふんだんに使った料理を味わいながら、四国山地の迫力ある渓谷や太平洋の青い海を堪能できるのが醍醐味です。
- 乗車区間
高知駅~窪川駅~大歩危駅(運行区間・スケジュールは季節により変動) - 予約方法
JR四国のウェブサイトや電話、旅行代理店で事前予約 - 見どころ
清流四万十川・吉野川沿いの壮大な自然、車内のレトロモダンなインテ
観光列車をより楽しむポイント
事前予約が基本
観光列車は座席指定や特別車両が多く、事前予約必須の場合がほとんど。特に週末や観光シーズンは早めに埋まることが多いので、乗りたい列車の予約開始日をチェックしておきましょう。旅行代理店が独自のツアーパッケージを組むこともあるので、セットで申し込むとスムーズに観光も楽しめます。
車内限定グルメは見逃せない
観光列車では、沿線の特産品を使った限定グルメやスイーツが販売されることが多いので要チェック。席まで届けてくれるサービスや、カフェカウンターで販売する場合など形態は様々。旅の楽しみを倍増させてくれる仕掛けが満載です。
車窓を楽しむための座席選び
路線によっては進行方向の左右で見える景色が大きく変わる場合があります。予約の際に座席指定ができるのであれば、絶景が広がる側を指定しておくとベスト。また、展望デッキやラウンジスペースがある列車なら、自由に移動していろんな角度の景色を満喫してみてください。
公共交通機関を使った旅の最大の利点は、「移動自体がエンターテインメントになる」という点です。とりわけ観光列車は、個性的な車両デザインから地域に根ざした食文化まで、“乗るだけで観光”できてしまう特別感が味わえます。日本全国にはまだまだ数多くのユニークな列車が走っており、四季折々の景色とあわせて楽しめるのが魅力。
次の旅行先を考えるときには、ぜひ観光列車の候補をチェックしてみてください。運転に疲れることなく、車窓の向こうに広がる絶景や車内サービスにじっくり浸れる旅は、何ものにも代えがたい充実感をもたらしてくれるはずです。少し早めの予約と情報収集をして、あなた好みの観光列車で“公共交通機関の旅”を満喫してみませんか?